こんにちは!ブランディング企画室です。

 

もう年末間近ですね。

年末年始にみかんの消費量がピークを迎える私ですが、早くも手のひらと足の裏が黄色くなってきました。

おいしいので食べ過ぎてしまいますが、カロチンの過剰摂取には注意です。

 

さて、そんな中行ってまいりました!ブラ旅47。

 

★ブラ旅47とはーーー・・・

大和グラビヤのブランディング企画室が日本全国47都道府県の旅に出る企画、
略して「ブラ旅47」!

全国各地の食べ物やお土産や工芸品・・・それらに関わっている人たちとの出会いや、
その体験で感じたことや得たものを旅の記録として綴っています。

 

 

さっそくですが、今回の行先は…青森県!!
県営名古屋空港から飛行機で約1時間20分。

11月某日、飛行機を降りた瞬間、芯から冷えるような寒さにびっくりしつつも、無事青森県に初上陸を果たしました。

 

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突然ですが皆さん、「こぎん刺し」って聞いたことありますか?

こぎん刺しとは、麻生地に刺し子を施したもので、津軽地方の伝統手工芸です。

とにかくまず見てください。

くるみボタン

くるみボタン/弘前こぎん研究所カタログより

 

とっても可愛くないですか?

シンプルながらも洗練されたデザイン。

この幾何学模様が「北欧風で可愛い!」と、近年若い世代にも人気が出ているのです。

 

ちなみに、私がこぎん刺しを初めて知ったのは、星野リゾートの「界 津軽」のお部屋を写真で見た時です。

残念ながら泊まった事はないのですが、すごく素敵な空間で、シンプルな菱形の模様が印象的でした。

 

というわけで、青森を代表する伝統工芸であるこぎん刺しについてもっと深く知りたい!

伝統を継承していく術や思いについても伺いたい!と思い、ある場所へ向かいました。

 

青森空港からレンタカーを走らせて1時間弱。

 

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今回の旅の目的地は、弘前市にある「(有)弘前こぎん研究所」。

出迎えてくださったのは、所長でいらっしゃる成田貞治さん。

 

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とってもお洒落な方だなぁと思ったら、ネクタイも胸元のバッジもこぎん刺しだ…!

そんなファッショナブルな成田さんに、まずはこぎん刺しについて教えていただきました。

 

 

1.こぎん刺しの始まり

 

こぎん刺しの始まりは江戸時代まで遡ります。

江戸時代、津軽では度重なる飢饉や、様々な倹約令が農民たちを苦しめていて、衣服に対する厳しい規制もありました。

 

綿花が育たない津軽では木綿は高価だったため、農民は麻の着物しか許されなかったのです…。

麻って夏に着ると涼しくて良いですが、極寒の青森で…と思うとゾッとしますね…。

 

そこで、津軽の女性たちは「こぎん」と呼ばれる、着丈が膝上くらいの麻の着物に細かくびっしりと縫い刺しをし、少しでも寒さを凌げるよう補強しました。

 

これが「こぎん刺し」の始まりです。

 

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左から西こぎん・東こぎん・三縞こぎん/弘前こぎん研究所資料より

地方によって特徴が異なる。特に「西こぎん」は「嫁を貰うなら西から貰え」と言われた程秀逸。

 

 

元は麻糸で縫っていましたが、江戸時代中期には、農民でも木綿の糸が手に入るようになり、現在に残るこぎんの技術がほぼ出来上がります。

木綿の糸は、麻糸に比べて刺しやすいため、複雑な美しい形の菱模様が刺せるようになったのです。

 

名刺入れ

名刺入れ/弘前こぎん研究所カタログより

 

今までお見せした写真のように、現在では生地も糸もカラフルなものが多いですが、

当時の農民は衣服の素材だけでなく、高価な色染めも禁止されていたそう。

そのため、藍の着物と白い糸の単純な色合いのコントラストをより美しくするため、女性たちは競うようにして美しい模様を刺したとの事。

これが現在、世の女性たちに「可愛い~!」と言われるような、洗練された美しい模様になったんですね。

 

言わば「寒さしのぎ」から生まれた作業でしたが、津軽の女性たちが「美しさ」という付加価値を見出したことで、現在に至るまで伝統工芸として継承され、今もなお多くの人に愛されています。

 

伝統工芸の始まりは色々あると思いますが、こぎん刺しは津軽の女性たちの知恵と愛情から生まれ、やがて芸術へと昇華していったという興味深い背景があります。

 

 

2.こぎん研究所のこと

 

さて、こぎん刺しの奥深い歴史について触れる事が出来たところで、今度は「弘前こぎん研究所」の取り組みについて伺いました。

弘前こぎん研究所は昭和17年設立で、成田さんは3代目の所長でいらっしゃいます。

 

「ここでは製品の一部を試作したりはしていますが、普通の会社と異なっているのは、刺す作業が99パーセント内職であることです。」

 

実は、作業のほとんどはこの研究所内ではなく、在籍している地元女性たちによって、お家で行われているそうです。

現在名簿上で100名ほどの内職さんがいらっしゃるとの事。

 

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内職さんが家で刺して持ってきた作品

 

「出来る人が出来る時間に出来るだけ。基本的にはマイペースにやってもらっています。」と成田さん。

 

例えばこの辺りはリンゴ農家さんが多いため、農繫期以外の時期に作業をする内職さんもいらっしゃるんだとか。

お仕事として、というよりは、生活の傍ら、好きで続けている方々が多いみたいです。

 

 

奥の作業場も案内していただきました。

1階には、麻の生地がたくさん置いてあります。

 

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「ここにあるのものは、こぎんをやるための生命線になる麻の生地です。特別に1年に1回織ってもらっている、オリジナルの生地です。うちのこぎんの模様が綺麗だねって言ってもらえるのは、生地にこだわっているから。」

 

 

 

というのも、こぎん刺しは、麻生地の縦の織目に対し、奇数の目数で刺していく技法です。

1・3・5という単位で布目を拾って刺し、目をずらしていくことで幾何学模様を描き出します。

 

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内職さんから受け取ったばかりの刺し終わった生地。模様が美しい

 

とても雑な言い方になってしまいますが、簡単に言うと…

 

めちゃくちゃ地道で細かい作業だということ!!

 

なので、そもそも生地の織目が歪んでいると、こぎんの幾何学模様が綺麗に出ないというわけです。

ちなみに、この特注の麻はこぎんをやっている方からすると相当良いもののようで、偶に生地を分けてほしいと言われる事があっても「そこはもう“ごめん!”ですね。(笑)それだけは出来ない!」そうですよ。

 

さて、続く2階にも案内していただきました。

 

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こぎん刺しの「こぎんざし」

 

2階には作業している女性たちが。

ここでは、広幅の生地を各商品に合わせて裁断し、グラフと糸をつけて、来てくれる内職さんに渡したり、刺した後の生地にアイロンがけをしたりしているそう。

 

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内職の方々へ手渡すセット

 

「グラフ」というのは、柄の図案のことで、内職さんへの指示書のようなもの。

その一部を見せていただきました。

 

図案の一例。手書きのものがほとんどだそう。

 

ちなみに、こちらのグラフを持って説明してくださった女性、実は所長の成田さんのお嬢様です。

地元がこちらで、やはり身近にこぎん刺しに関わっていらっしゃるようです。

 

「こぎん刺しはモドコを組み合わせて色々な柄が出来ていくのですが、その組み合わせは無限で、どんどん増え続けていますね。」(モドコ…こぎんの基礎的な模様の事)

 

と、嬉しそうに語ってくれました。

 

 

3.こぎん刺しのこれから

 

作業場を見学させていただいて気づきましたが、どうやら、ここは「研究所」でありながら、こぎん刺しを広め、継承し、続けていくための場所でもあるみたいです。

 

例えば、最近は外国人の方向けのワークショップが人気だそうです。

日本の観光ツアーにこちらのこぎん研究所の見学・体験が組み込まれたり、成田さん自身が海外へ行ってワークショップを行うことも。

 

また、成田さんはフランスの*「メゾン・エ・オブジェ」に幾度も参加・出展し、海外にもこぎん刺しの魅力を広く伝えていらっしゃいます。

(*「メゾン・エ・オブジェ」パリで毎年1月・9月に開催され、インテリアや雑貨など、家に関連する様々なアイテムが集結する見本市。“インテリア業界のパリコレ”とも呼ばれる)

 

最近では有名大学の講義に呼ばれて講師を務めることもあるそうです。

「そんな場で何を話していいか分からない」と冗談交じりに仰っていました。

 

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記念にチェキと「好きな言葉を」とお願いしたところ、直球すぎるメッセージが!(笑)

こぎんへのシンプルな愛が伝わります

 

最近では「こぎん刺し」そのものだけでなく、「柄」としての活用も多いようです。

 

「今のこぎんは、第何次ブームか分からないけど、色々なところで取り上げてもらっていますね。例えば新聞の背景模様に使っていたり、JR弘前駅や青森の新幹線の駅はこぎんだらけだったり。ステッカーで貼ってあります。」

 

津軽の女性たちが生み出した美しい工芸は、今やファッション性の高い「柄」としての価値も見出されています。

 

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弘前市内の歩道。よく見るとこぎんの模様!

 

何かの絵でもなく、文字でもなく、「柄」で地域性を表せるのって面白いですよね。

しかもさりげなくお洒落に!

汎用性が高いので、色々なところに気軽に取り入れることが出来そう。

これからの展開も楽しみです。

 

 

4.旅を終えて

 

こぎん研究所でお会いした方々は、皆さん津軽弁で話してくださるのですが、とても柔らかくて心地よい、優しい響きでした。

初めての青森旅でドキドキでしたが、青森ならではの伝統について知ることができ、とても良い旅になりました。

 

弘前こぎん研究所の建物は、実は前川國男の処女作。

 

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国の登録有形文化財に登録されています

 

弘前こぎん研究所は、こぎん刺しの歴史に触れ、それがどんな形で守られ、継承され、新たに展開されているのか、現在進行形で知る事の出来る貴重な場所でした。

 

今回の取材を通して、こぎん刺しの伝統や技法を正しく継承していく使命感と同時に、国内に留まらず広くその魅力を伝えていこうとする成田さんの強い姿勢を感じました。

 

皆さんも、津軽の女性たちが紡いできた、愛と知恵の証であるこぎん刺しに、ぜひ一度触れてみてはいかがでしょうか?

 

 

————————-取材協力——————————

弘前こぎん研究所

〒036-8216 青森県弘前市在府町61

TEL   0172-32-0595
営業時間 9:00〜16:30
定休日  土・日・祝祭日

※見学可能

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さて、次回はお隣の岩手県。

盛岡市の中津川沿いにある、素敵な雰囲気の雑貨屋さんに訪問しました!

12/27(金)更新予定です。お楽しみに♪